燃料費調整額の変動や、容量市場・容量拠出金、託送料金による影響など、電気代の値上げの原因は少々複雑です。2024年5月から再生可能エネルギー発電促進賦課金による値上げが決定。また、同年7月以降は政府による電気代・ガス代の補助政策も終了します。
そこで電気代が値上げされている原因から、具体的にどのくらい高騰しているかわかりやすく解説します。毎月の電力会社からの請求金額を見て、今後の推移が気になる方は、ぜひチェックしてくださいね。
2024年、電気代が値上がりするタイミング
- 4月=託送料金・容量拠出金による値上げ
- 5月=再生可能エネルギー発電促進賦課金による値上げ
- 7月=政府による電気代・ガス代の補助政策が終了
2024年7月は10社が電気代を値上げ!
電気料金の設定金額は、電力会社によって違います。本章では、旧一般電気事業者のなかで、どの会社が値上げをするのか最新情報を紹介。
電気・ガス価格激変緩和対策事業の終了が原因で10社が値上げ
一般的な電気料金は、次のように計算されて請求されます。
上記の計算式のうち「燃料費調整額」は、発電に必要なLNG(液化天然ガス)や原油などの燃料の価格変動を電力量料金に反映する項目。毎月変動するため、この項目が高くなれば、請求される電気代も高くなります。
2024年5月請求分から、再生可能エネルギー発電促進賦課金の単価が値上がり。2024年6月請求分からは、政府が実施していた電気代・ガス代の負担軽減策「電気・ガス価格激変緩和対策事業」の補助金が半額になりました。さらに2024年7月請求分からは、対策事業そのものが終了するため、電気代が値上がりしています。沖縄電力は「沖縄電気料金高騰緊急対策事業」という独自の負担軽減策も同タイミングで終了する影響が見られます。
次の表は、月の使用電力量が260kWhの場合で、各社の電気料金を試算し、前月と比べていくら値上げ・値下げしているかまとめたものです。
【最新】各電力会社の電気代の値上げ状況
なぜ関西電力と九州電力は電気代が安い?
先の、各電力会社の電気代の値上げ状況をまとめた表を見て、「関西電力と九州電力だけ電気代が安いのはなぜ?」と疑問に持った方も多いのでは。その理由は、電源構成にあります。関西電力・九州電力と東京電力の電源構成を比較してみると、2社は原子力発電の比率が多いことがわかります。
原子力発電の比率を上げ、発電コストの高い火力発電を抑えることで、他エリアの電力会社よりも安い電気料金になっているのです。ちなみに、2023年6月に複数の旧一般電気事業者が電気料金の値上げを行いましたが、関西電力と九州電力は実施しませんでした。
2024年は5月と7月に電気代が値上げ!
2024年も電気代は値上げ傾向にあります。
詳しくは後述しますが、4月から一部の電力会社において、託送料金・容量拠出金による料金改定が実施されました。託送料金に関する料金改定の影響額は電力会社によって異なり、数十円単位で値上げされるところもあれば、逆に値下げをする会社も。一方、容量拠出金による料金改定については、内容が少々複雑です。基本料金・電力量料金などは据え置きのため、一見値上げしていないように見えますが、容量拠出金に関する項目が加算されて電気料金が算出されるようになります。影響額については会社によって大きく異なりますが、数百円単位で値上げするところも見受けられます。
全世帯の電気代に影響が及ぶのは「5月」と「7月」の請求のタイミング。
5月は、電気料金に含まれている再生可能エネルギー発電促進賦課金の単価が、1円40銭/kWhから3円49銭/kWhに値上げ。2円9銭の値上げとなり、月260kWh使用した場合は543円も高くなる計算になります。
7月は、2023年1月から政府が実施していた電気代・ガス代の負担軽減策「電気・ガス価格激変緩和対策事業」の補助額がなくなるためです。月の使用電力量が260kWhだと、5月請求分までは910円、6月請求分までは468円補助されていたので、その分電気代が高くなることに……。
※上記は「電気・ガス価格激変緩和対策事業」が反映される請求月です。7月請求分は、5月の使用分(5月検針と6月繰越検針分)が反映されたものです。
2024年の電気代が値上げする理由について、それぞれ詳しく解説していきしょう。
2024年電気代が値上がりする理由
- 再生可能エネルギー発電促進賦課金
- 電気代補助が2024年5月使用分で終了
- 託送料金
- 容量拠出金
値上げの理由1)再生可能エネルギー発電促進賦課金
再生可能エネルギー発電促進賦課金とは、太陽光発電・風力発電・地熱発電・水力発電などの再生可能エネルギー発電を普及・拡大させることを目的に、電力会社が再生可能エネルギーを買い取る際の費用を消費者が負担するもの。
年度ごとに経済産業省が算定を行っていて、毎年5月に料金が改定されています。2024年度は3円49銭/kWhに決定し、2023年度と比較すると2円9銭/kWhも値上げします。
「2023年5月分~2024年4月分」と「2024年5月分~2025年4月分」の
再生可能エネルギー発電促進賦課金の差額を見ていきましょう。
24年5月分~25年4月分3.49(円)×260(kWh)×12(月)=10,888円
23年5月分~24年4月分1.40(円)×260(kWh)×12(月)=4,368円
再生可能エネルギー発電促進賦課金は、銭単位が切り捨てられます。
毎月260kWh使用すると、年間6,520円の値上げとなるため、家計への影響も小さくないと言えます。
値上げの理由2)電気代補助が2024年5月使用分(2024年7月請求分)まで
2023年1月から、政府は電気代・ガス代高騰対策として「電気・ガス価格激変緩和対策事業」を実施してきましたが、2024年5月使用分までです。実際に請求が発生する7月から、なくなった補助額の分だけ電気料金が高くなってしまいます。「電気・ガス価格激変緩和対策事業」は次のように1kWh単位で補助額が決まっていたため、月の使用電力量が多いご家庭ほど、負担も増えると言えるでしょう。
例えば、毎月の使用電力量が260kWhのご家庭の場合、以下の金額分の補助が受けられていたので、なくなれば少なくない負担が増えると言えるでしょう。
一般家庭で月260kWhの電気を利用した場合
2023年9月使用分~2024年4月使用分月910円の補助
2024年5月使用分月468円の補助
値上げの理由3)託送料金
そもそも託送料金とは、小売電気事業者が送配電事業者※に支払うことを法令で義務づけられている「送配電網の使用料」を指します。
送配電事業者とは、北海道電力ネットワーク、東北電力ネットワーク、東京電力パワーグリッド、中部電力パワーグリッド、北陸電力送配電、関西電力送配電、中国電力ネットワーク、四国電力送配電、九州電力送配電、沖縄電力を指します。
2024年4月から、発電事業者も託送料金の支払い義務が発生した影響で、小売電気事業者が負担する発電費用が増加したため、電気料金に転嫁されます。これは、再生可能エネルギー電源の増加などの影響で、送配電施設の維持と拡充の費用負担も増えるため、小売電気事業者と消費者だけでなく、発電事業者も公平的に負担することが目的となっています。
託送料金はエリアによって違うため、値上げする電力会社もあれば、値下げする電力会社もあります。
旧一般電気事業者の電気料金への影響金額は次のとおりです。
上の影響額は、各社の「従量電灯」「従量電灯A」「従量電灯B」で試算したもの。プランによって基本料金(または最低料金)・電力量料金単価の改定額が異なるので、影響額も変わってきます。
値上げの理由4)容量市場と容量拠出金
容量市場は、「今、発電された電力量(kWh)」を取引する卸電力市場と違い、「将来にわたって見込める供給力(kW)」を確保するための市場です。なぜ「将来にわたって見込める供給力」を取引するのでしょう。それは太陽光や風力などの再生可能エネルギーが大きく関係しています。
現在、国をあげて再生可能エネルギーを利用した発電の比率を増やすことが叫ばれています。しかし、再生可能エネルギーによる発電は季節や天候の影響を受けやすく、非常に不安定です。そのため、再生可能エネルギーの発電力が不足した場合、主に火力発電で補っています。
しかし火力発電は、発電設備を維持するための投資が必須。にも関わらず、「実際に発電された電力」しか売ることができないと、発電事業者は将来の資金回収のめどが立てにくく、設備投資はなかなか進みません。
こうした電力をとりまく問題を打開し、安定した電力の供給力を確保することを目的として、電力広域的運営推進機関によって2020年に設立されたのが、容量市場です。「将来にわたって見込める電力」を先に取引できれば、発電事業者は将来的な収入の見込みが立てられ、円滑な設備投資・維持が可能になり、電力の安定供給につながるのです。安定供給が実現すれば、電気料金の高騰も少なくなるなど、消費者のメリットにもつながると考えられます。
容量市場のオークションで決定されるのは、4年後の電力供給力とそれに対する約定価格。落札された発電事業者は4年後の供給力確保を約束し、その対価を市場管理者である電力広域的運営推進機関が支払います。電力広域的運営推進機関は、発電事業者に支払うお金を「容量拠出金」という名目で、支払い義務がある小売電気事業者や一般送配電事業者などに請求します。
容量市場の取引は2020年度に始まったので、容量拠出金が初めて発生するのは2024年4月からです。すでに一部の電力会社ではこの負担を電気料金に転嫁することを決定しています。電気料金に転嫁するか否かは電力会社によって異なるので、料金改定がないか各社からのお知らせをマメにチェックするとよいでしょう。
電気代の値上げ対策
電気料金が値上げした際の対策をご紹介します。電気料金の値上げへの対策は、主に次の4つです。それぞれ詳しく解説しましょう。
- 電力会社・電気料金プランの見直し
- 節電に取り組む
- 省エネ性能が優れている家電に買い替える
- 太陽光発電設備の設置
電気代の値上げ対策1)電力会社・電気料金プランの見直し
電力会社・電気料金プランを切り替えるのも対策の一つです。各社、さまざまな料金設定のプランを提供していて、生活スタイルにぴったりのものに切り替えれば、電気代を節約できますよ。複数社を比較する際は、次の点を確認しましょう。料金設定各社の電気料金プランは、基本料金(最低料金)と電力量料金の単価設定が異なります。なかには、使用量が少ない方向けや、使用量が多い方向けの料金設定をしているプランも。電気料金の算出方法旧一般電気事業者と同様の燃料費調整額を含めた算定方法が一般的ですが、一部電力会社では独自の調達費用を導入していることもあります。算定方法は、電気代にも大きく影響する点なので、必ず確認してください。特典内容ポイント還元やガスとのセット割など、お得な特典付きの電気料金プランもあります。料金単価に加えて、特典も考慮して比較しましょう。キャンペーン電力会社によっては、キャッシュバックやギフト券といった新規申し込み特典を用意しています。特典が適用されると、契約切り替え初年度の電気代の節約につながりますよ。
電気代の値上げ対策2)節電に取り組む
節電に取り組むのも、値上げ対策に効果的です。エアコン、冷蔵庫など消費電力の多い家電の使い方から見直すのがおすすめ。例えば、次の手軽な節電方法から取り組んでみてはいかがでしょう。
- エアコンの設定温度を調整する
- 冷蔵庫内に食品を詰め込みすぎない
- テレビの明るさを調整する
- 照明の点灯時間を1日1時間短くする
電気代の値上げ対策3)省エネ性能が優れている家電に買い替える
10年以上使用している家電製品をお持ちの場合は、買い替えを検討するのもおすすめ。経済産業省エネルギー庁の調べによると、2019年型のエアコンと2009年型の年間消費電力量を比較すると、約17%の省エネにつながるとのことです。購入費用はかかりますが、長期的に見れば電気料金の値上げ対策につながるでしょう。
電気代の値上げ対策4)太陽光発電設備の設置
今後、電気料金の高騰が続くことを見越して、自宅に太陽光発電設備を設置するのも一案。発電によって、電気の購入量が減った分だけ節約につながるのに加え、余った電気は電力会社に売ることもできます。
ただし太陽光発電設備の導入には少なくない費用がかかるため、どの程度の効果が得られるかしっかりシミュレーションをしましょう。
まとめー避けられない値上げにどう備えるか
今回の記事では「2024年7月の電気代値上げと、その理由・対策」について紹介しました。
先述の通り、値上げすること自体については避けられない事なので、事前の備えが必要でしょう。
省エネ家電に買い替える・節電を心がける等の取り組みが大切であると思われるなか、
なかなか難しいといった声も多く上がるでしょう。
円安や物価高の影響が様々なところまで広がっている今の日本で、いかに豊かに生活を
送っていくか、その為にはどうすればいいのか、学習意欲をもっていかなければなりません。
U-star電材ガス設備事業グループ 代表