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蓄積し続けるひずみ「地震のメカニズム」
日本は世界有数の地震大国ですが、
なかでも差し迫った脅威として耳にすることが多い「南海トラフ」
という言葉。正しく恐れるためには、まず日本を取り巻く環境を
知る必要があります。
地球の表面は「プレート」と呼ばれる十数枚の岩板に覆われています。
それらは少しずつ動いていて、海のプレートが陸のプレートの下に
沈み込んでいる境界線もあれば、陸のプレート同士がぶつかり合って
隆起しているところも。
その影響で、プレート境界あたりでは地震活動や火山活動が多く発生します。
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海のプレートであるフィリピン海プレートが、陸のプレートである
ユーラシアプレートの下に潜り込んでいく境界線が、南海トラフ。
日本周辺には4つのプレート
(ユーラシアプレート、北米プレート、太平洋プレート、フィリピン海プレート)
が密集しています。フィリピン海プレートは、ユーラシアプレートの方向に
進んでいて、最後はユーラシアプレートの下に沈み込んでいきます。
この2枚のプレートの境界線は、海底を走る細長い溝になっています。
この東海地方から紀伊半島、四国にかけての南方沖約100kmをほぼ東西に
走る、海底にある長さ700kmの細長い溝が「南海トラフ」と呼ばれている
ものです(トラフ、とは海底地形のうち細長い凹地のことを意味します)。
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海底の大陸プレートを押し曲げながら、海洋プレートが沈み込んでいく。
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大陸プレートの「ひずみ」が限界に達して、一気に跳ね返ることで
地震と津波が発生する。
海のプレート(フィリピン海プレート)が沈み込んでいくとき、同時に
陸のプレート(ユーラシアプレート)は引きずり込まれ、少しずつ
「ひずみ」を蓄積していきます。そして限界点に達すると、
陸のプレートは「ひずみ」を解放して、一気に元の状態に戻ろうとします。
この跳ね返りはプレート間の境界で大規模な破壊を起こし、それが大地震
として私たちに伝わるのです。
このタイプの地震は海底で起こるため「海溝型地震」と呼ばれます。
M8クラス以上の巨大地震になることが多く、広範囲にわたって被害を
もたらし、大津波が発生しやすいのが特徴。東日本大震災を起こした
2011年の東北地方太平洋沖地震も、この海溝型地震でした。
複数の震源域が同時多発的に動く
南海トラフは、「東海」「東南海」「南海」という3つの震源域に
分けられています(さらに西側に広がる日向灘までを含める説も)。
この複数の震源域は、短期間のうちに連動する形で過去に何度も
大地震を起こしていることから、
今後も大震災の引き金になるものとして危険視されています。
この一連の大地震を総称して「南海トラフ地震」と呼ばれている
天災の正体です。
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なお南海トラフ地震の発生パターンは毎回大きく異なり、
東海・東南海・南海すべての震源域で同時に発生したこともあれば、
数年の時間差で次々と揺れたこともありました。
そのため、震源域を個別に見るのではなく、南海トラフは連動しながら
一体となって揺れるものとして考えるのが一般的です。
周期的には秒読みか
静岡県の駿河湾から、四国最南端の足摺岬の沖合に広がる南海トラフでは、
過去に100〜150年の周期でM8.0〜8.7規模の巨大地震が繰り返し起こってきました。
このことから、
前回の南海トラフ地震(1944年の昭和東南海地震および1946年の昭和南海地震)
が発生してから80年近くが経過した現在、
つぎの南海トラフ地震は目前にまで差し迫っていると
警鐘が鳴らされているのです。
一方で、2011年に東北地方太平洋沖地震が発生したことは、
わずか数百年のデータから地震の規則性を見出し、
次に起こる地震・津波の発生時期・規模を想定することの難しさを
示す教訓となりました。また過去に
南海トラフ地震発生地域で、地層中の津波堆積物を調査したところ、
歴史上の記録をはるかに上回る巨大地震が有史以前に発生していた
ことを示唆する証拠が見つかっています。
このことからも、やはり人類史上に残っている記録だけを頼りに災害の
発生時期・規模を予測するのは難しいとされています。
30年以内で70〜80%の発生確率
地震大国である日本では、
長年にわたって地震を予知するための研究も行われてきました。
それでも現在の科学的知見からは、地震発生の日時・場所・規模を
当てる「予知」は不可能とされています。
とはいえ先述のように、周期的に発生するタイプの地震は、
地震が起きていない期間が長くなるほど発生確率が高まります。
政府の地震調査委員会は2024年1月、南海トラフ周辺で今後
M8.0〜9.0の巨大地震が発生する確率を、
10年以内では「30%程度」、30年以内では「70〜80%程度」、
50年以内では「90%程度もしくはそれ以上」として発表しました。
その被害は、四国や近畿、東海などの広域に及び、東日本大震災を
大きく上回ると想定しています。
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↑今すぐ備えるべき「非常食3日分セット」
衝撃の被害予想
令和元年、政府は南海トラフで起きることが予想される「最大級」の
地震をベースに、被害想定を再計算し公表しました。
内閣府のデータによると最悪の場合、
全国でおよそ23万1,000人が死亡し、揺れや火災、津波などで
約209万棟の建物が全壊もしくは焼失すると推計されています
(うち地盤の液状化によって全壊する家屋は11〜13万棟)。
さらに発災直後のインフラ被害想定は約2930万世帯での
停電、断水によって約3570万人が上水道を、約3460万人が下水道を
利用できなくなり、約180万世帯でガスの供給が停止。
さらに家庭内備蓄や被災都府県・市町村の公的備蓄だけでは
食料が不足することも想定されていて、
その不足量は発災後3日間の合計で
最大約 2,100 万食とされています。
発災直後の帰宅困難者は中京圏で約410万人、近畿圏で約660万人
と予測。
断水の影響から、1週間後には約880万人の避難者が発生し、
避難所での生活を余儀なくされる避難者は約460万人にまで
のぼるとされています。
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地震の「予知」はできない!
未来に発生する地震の、時間・場所・規模を特定するような「予知」
はできません。その理由は、
地震が発生する直前に起きる現象の科学的な立証ができていないからです。
そもそも地震の発生前に、何かしら決まった事象が起きているかどうか
すら証明されていません。
台風や大雪であれば「低気圧が発達してきた」「寒気が流れ込んできた」
など、当該の現象が起こるまでの要因・プロセスを明確に捉えることが
できるため、事前に警告を出すことができます。
ところが地震には発生前の予想材料がないため、科学的に予知する
手法が確立されていないのです。
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こんな情報には注意!
それにも関わらずインターネット上では、
未来の地震を「予感」させるような予知情報が飛び交います。
パッと目に入ったセンセーショナルな情報をうのみにしたり拡散せず、
どんな人物・組織から発された情報なのかを念入りに調べることが大切です。
以下一覧は、話題になりがちな地震の「予知」を匂わせる投稿の代表例です。
◆超能力者が予言した
超常的な能力があるとされる人物、もしくは未来から来たという人物が
未来の地震を予言したり、歴史上の人物が残したとされる言葉や書物などを
将来の地震発生に結びつけて解釈したりするもの。
◆法則性、規則性を訴える
A地点で地震が起きたあと「過去にはA地点で地震が起きた数日後、
B地点でも地震が起きた」という規則性を訴えるもの。
〇〇の法則などと呼ぶことも。特定の日付や時間帯に地震が起こりやすい、
などといった主張もある。
◆独自の観測データを掲げる
投稿者オリジナルの計測を行い、あくまでもデータに基づく情報だとして、
地震予知に結びつけるもの。独自の機器を使う場合から、地鳴りが聞こえた、
ペットが暴れたといった報告まで幅広い。
◆陰謀論
特定の集団や組織が特殊な装置を使って人工的に地震を発生させている、
もしくは海底工事などによって人類が地震を引き起こしていると主張するもの。
◆珍しい雲を見かけた
地震の前には特殊な雲が発生すると信じ、見慣れない形の雲を「これだ」と
撮影してネット上に投稿されるもの。
ただし「富士山に笠雲がかかると、近いうちに雨が降る」といった天気に
まつわる一部の通説は、科学的にも説明されている
(地震と雲の関連性は立証されていないので注意)。
◆海洋生物が打ち上げられた
イルカなどの海洋哺乳類、リュウグウノツカイなどの深海魚が普段は姿を
見せない浅瀬に現れたり海岸に打ち上げられたりすると
「海の中で、地震につながる異変が起きている」と騒がれるもの。
珍しい現象を目の当たりにしたり、もっともらしく説得されれば、誰でも
「地震が起こるかも」と思ってしまうことがあるかもしれません。
そんな時は、やみくもに恐れたり恐怖心を周囲に拡散するのではなく、
まずは自宅や身の回りの防災対策を見直しましょう。
事前警告できる地震とは
地震の発生時期や場所・規模を局所的に予知する科学的な手法は確立されていません。
それでも予測される巨大地震に対しては、1秒でも早く警戒情報を出すために
公的な取り組みが行われています。
南海トラフ沿いで異常な現状が観測された場合など、
地震発生の可能性が相対的に高まっていると評価されると「南海トラフ臨時情報」
が発表されます。この情報名のうしろには「(調査中)」または
「(巨大地震警戒)」など、発表時の状況を示すキーワードが付記されます。
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気象庁は南海トラフ沿いにおけるマグニチュード6.8以上の地震やプレートの
ひずみの変化など、異常な現象を観測すると、まずは5〜30分後に
「南海トラフ地震臨時情報(調査中)」を発表します。
その後すぐに専門家で作る評価検討会が巨大地震との関連性を検討し、
最短2時間で結果を発表。これを受けて政府や自治体からは、
先述のキーワードに応じた防災対応が呼びかけられます。
猶予は数秒から数年?
そもそも既にマグニチュード6.8以上の地震が起きているのに、
さらに未来の地震を警告する臨時情報を出すことに意味があるのか、
疑問に感じるかもしれません。
世界の過去事例では、マグニチュード8以上の地震が発生した後に、
隣接するエリアでマグニチュード8クラス以上の地震が発生した事例は、
103事例中、7日以内に7事例、3年以内に17事例が知られています。
南海トラフでも同様の事象が起こる危険性があるため、
一度でも南海トラフ沿いで地震が発生した場合には注意が必要なのです。
過去に発生した記録が残っている南海トラフ沿いの大規模地震8事例のうち、
少なくとも5事例は東側・西側の両領域がほぼ同時もしくは時間差をもって揺れています。
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もし臨時情報が発表されたら
「南海トラフ地震臨時情報(巨大地震警戒)」が発表された場合は、
日頃からの地震への備えの再確認に加え、地震が発生したらすぐに避難できる
準備をします。
地震発生後の避難では間に合わない可能性のある住民は、1週間の事前避難を
行う必要があります。
「南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)」が発表された場合は、
事前の避難は伴いませんが、日頃からの地震への備えの再確認に加え、
地震が発生したらすぐに避難できる準備をしましょう。
いずれにも当てはまらない現象と評価した場合は、
「南海トラフ地震臨時情報(調査終了)」が発表されますが、
大規模地震発生の可能性がなくなったわけではないので、
警戒しながら通常の生活を行います。
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また南海トラフ沿いで異常な現象が観測されず、
何の発表もなく突発的に南海トラフ地震が発生することもあります。
逆に、臨時情報は発表されたものの南海トラフ地震が発生しないこともあります。
いずれにしても南海トラフ地震が起きる可能性は高まった状態が続いているので、
地震はいつ発生してもおかしくないと心得ておきましょう。
まとめ_今からできる事を全力で!
被害想定と同時に、
政府は建物の耐震化や家具等の転落・落下防止対策を進めることで、
死者数は60〜80%減らせるとしています。
また津波に対して発災後すぐに全員が避難することや、
電気火災の発生を抑制する感震ブレーカーを設置することも、
想定死者数を大幅減少させる有効手段として期待されています。
先述のとおり、
南海トラフ地震では数千万世帯がインフラ被害を受け、
数百万人が避難者としてサポートを必要とする状況に陥ります。
道路がひどく損傷すれば、
遠地からの支援物資が遅延・縮小せざるを得ない事も想定されます。
新型コロナウイルスの感染拡大が続く今、避難所での生活は
以前よりも厳しいものになることを想定せざるを得ません。
地震・津波を生き抜くには、
各家庭や職場での防災対策、備蓄を充実させることが欠かせません。
南海トラフ地震は「いつか起こる」のではなく、
「いま起きてもおかしくない」大災害です。
今あなたが防災のために起こすアクションは、
未来のあなたや、あなたの大切な人を守ることに直結します。
天災は、起こってしまってからは備えられません。
大切な命と暮らしを守るため、今すぐ行動を起こしてください。
U-star電材ガス設備事業グループ 代表